S・ドヴラートフ


photo1 旧ソ連出身の亡命ロシア作家。バシキールのウファに生まれ、レニングラード(現サンクト・ペテルブルク)に育つ。父はユダヤ人、母はアルメニア人。成績不良のためレニングラード大学を中退した後、徴兵され、コミ自治共和国で収容所の警備兵として働く。

レニングラードの文学的ボヘミアンの一員として小説を書きはじめるが、旧ソ連国内ではほとんど活字にすることができず、やがて国外で出版するようになる。当局からの圧力も強まり、結局、1978年に亡命を余儀なくされた。 以後、ニューヨークに住んで文筆活動を続ける。1980年には亡命ユダヤ系ロシア人のための新聞『新アメリカ人』を創刊、二年ほど編集長をつとめる。1990年、病気のためニューヨークで没。

ドヴラートフの作品はロシア本国(ソ連)では長いこと読むことができなかったが、ペレストロイカ以後「解禁」され、特に90年代には人気が高まり、ブームがまき起こった。1993年にはサンクト・ペテルブルクで、主要な著作を集大成した3巻の著作集が10万-11万もの部数で出版された。 現代ロシアでもっとも人気のある作家の一人であり、彼の作品をもとにした戯曲もしばしば上演されている。いまやドヴラートフは「現代の古典」となった。

代表作に、『妥協』('81)、『ゾーン――看守の手記』('82)、『保護区域』('83)、『わが家の人びと』('83)、『手仕事』('85)、『かばん』('86)、『異国の女』('86)、『メモ帳』('90)、『出張所』('90)などがある。


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