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プリーシヴィンの日記        太田正一

2013 . 06 . 09 up
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1919年10月20日

 もちろん、こんな暮らしは堪らない。恐ろしい。でも、自分は好きである。夜明け前のお茶。まだみんな眠っているとき、お茶を飲みながら、乞食をして町をほっつき歩いている自分を想像する。またリョーヴァ(うちの少年)を愛しているし、どこへ行ってもほんとに嬉しそうに自分を迎えてくれる人たちも大好きだ。
 10月5(18)日までの戦闘の結果。ボリシェヴィキは、白軍を追い散らしてチェルナワを取り返したと言っているが、百姓たちに言わせると、それは逆で、むしろ白軍がボリシェヴィキをスタノワーヤへ追いやったのだ。目下エフレーモフへ軍を進めていて、カザキーもリャビーンスクも占拠したらしい。
 乾糞の予約登録。

牛糞に藁を混ぜて乾し固めたもの。燃料(主にロシア南部で)。

 授業を終えて教員室へ。人だかり。何事かと思えば、乾糞の予約の話である。
 白軍がトゥーラの60露里地点にいることがわかった。にもかかわらず、課は強化されている。撃ち合いはまだ先の話と思っていたが、夕方にはかなり近くでそれらしい音。

10月21日

 コミュニスト曰く――『働かざる者食うべからず!』。
 怠業者(サボタージニク)曰く――『食わざる者は働くべからず!』。
 ある人たちにとって謎だったのは、なぜ今、詩人は創造しないのかということ。家を建てるに相応しい時代でないことはわかる、でもなぜ今、詩人はものを書かないのか……
 一晩中、星は輝き、天の川が見えた、しかも厳寒(マロース)! 明けの明星が月の角(つの)の間近に迫る。マロース。もうすぐ冬だ。小さき人びと〔庶民〕はだいぶ前からよその家の柵を引っこ抜いている。教師たちは授業の準備に忙しい。忙しくして自らを慰めている。あと半月もすれば〔マロースのために〕授業ができなくなることがわかっているので……
 革命は詩人に言った――『おまえの夢はcoitus interruptusだ』と。ローザノフは自分の夢をcoitusという形で表現した。

中断された性交(ラテン語)。

 長編小説(ロマン)から。彼女は、彼が大胆に体を押しつけてくればくるほど、そのキスがだんだん冷ややかなものになってきたことに気がつく。確かに、日毎にいよいよ深く彼女の体に沈み込んでいき、ついにはすっぽりとスカートの中に姿を消してしまった。悲しくなったが、同時にまた心地よかった。嬉しかった。彼ならいいのだ。許される。下へ中へ身を沈めれば沈めるほど、彼はますます少年のように思えてくるのだった。彼は少年であり赤子である。許されて然るべき存在なのである。
 しばらくすると、そこに彼はいなくなった。内的なつながりがなくなり〔無縁の人となり〕、彼に代わって、新しい人間〔存在〕がばたばたし、もがき、息をし、恐れおののいている。〔彼女は〕そんな人間に関心を持ちだした。彼女は興味津々である……具現〔キリスト?〕としての愛、愛そのもの、自らから他者へ第三者への転移。愛は他者への第三者への転移の主観的感情なのだ。彼〔キリスト〕はこの感情なしに(愛なしに)この世に出現し得る。愛――それは他者への第三者への転移の朝焼け(ザリャー)。それは光であり、その光の力はわれわれが自ら発しているもののように思われる。

 日の出。朝焼けは美しかったが、天体は何ものにも似ない昇り方をした。肝腎なのは、朝焼けは朝焼けであり、天体はどこか屋根の向こうに独立して存在していたこと。屋根から出てしまうと、それに注意を向ける者はいなかった。それはきのう、明日はもっと良くなるという期待もなしに、いきなり不快な忌まわしいことが起こったからである。
 公共機関と革命裁判所〔1917-22〕が再開され、当番制および強略奪の中止に関する新しい布告こそ出たものの、銃の所持が許されなくなったので、〔これからは〕素手で強盗に立ち向かわなくてはならない。
 3種のビラが出た。1枚は新たに組織された革命委員会(レフコーム)について、1枚は非武装のわれわれが夜番をし、他人の家の柵を勝手に焚付けする者たちをしっかり監視せよというもの、あと1枚はその場で射殺すると嚇して命令に従わせる――そんな内容だった。こうした諸機関の復活はあらゆる計画をご破算にしてしまった。人びとは、赤が白を圧倒している、白は弱いと思い始めている。新聞は、オリョールはすでに占拠され、ヴォローネジもほぼ占領下にあると報じている……

 定住民族。入れ替わり、移動し、そして消えていく人びと――そういう者たちを何と呼ぶの課、〔そのような存在を〕自分は長いこと知らずにいた。豚や山羊が路上定住者(定住=オショードロスチこそは一大事業なのだ!)の唯一の遺失物であると思えてくる。今ふと閃いたのだが――人間は例外なしにただのゴロツキになってしまった(のではないか?!)
 昼食後にひと眠りと思ったが、どうしても眠れない。射撃音が聞こえるが、もう大して気にしなくなっている。〔戦闘〕現場の正確な位置を教えてくれる男あり。プレトチェーチェンスク郷はエレーツから25露里もある、たぶんこの戦闘は不首尾に終わるだろうなどと。荷車の音、輜重に続いて、何かがぞろぞろと……そんな動きが不思議なくらい気になりだす一方で、なぜかパンのことで頭がいっぱいになる。自分が口にしているのは他人のパンだ――そう思うと、堪らなくなる。愛する人たち(ミールィエ・リューヂ)を悲しませているのではないか……そんなことを思っていると、通りの音と動きがさらに大きくなってくる。思わず起きてしまった。窓の外を行くのは水兵だ。大砲を運んでいる。医者がやって来て、言う――カジーンカはそのままだが、ザドーンスク市は占拠された、と。そのあと市中でも砲撃があり、上空で炸裂。自分の当直日。白軍はきょう中にやって来るはず――これはラジオが傍受した(というが、町にはラジオは一台もない)。作り話の再燃だ。ソスナー川〔エレーツ近郊を通過しドンにつながる川〕の向こうに何か見える。散兵線か? 夕方までにはそれが、例によって慎重な決まり文句――〈あす白軍のエレーツ占拠は十分あり得る〉――そんなもっともらしい話になってしまうのである。
 元気を取り戻した脱走兵――大工であることがわかった。今はもう脱走兵ではない、みんなにマクシームと呼ばれている。
 当直である自分は、将軍みたいな命令口調で、№6のトラックを壊しにかかっているガキどもを追い散らしている。
 息せき切ってリョーヴァが報告する――中学校の屋根の上で炸裂した砲弾のこと、町の悪ガキどもが、馬に乗った水兵たちに蹴殺されそうになった小さな女の子を身をもって助けたこと。ありとあらゆるものが持ち出された。水兵たちは医院の歯科用器具から女子中学の物理実験室のものまで、残らず略奪して回っている。
 農村部はきれいさっぱりと巻き上げられた。羊、穀物、豚。人民教育課で赤軍の将校がこんな話をしていった――『村に着いたが、自分らには何も出そうとしない〔供出しない〕。そこで自分は言ってやった――『赤軍には出すのに白軍には何も出さないのか?』。するとこう訊いてきた――『本当におまえさまは白軍なのかな?』―『そうだ、自分はカザークの二等大尉だ!』。それを聞いて、連中〔村人たち〕はわたしを歓待し始めた。わが軍の輸送隊も到着しつつあったので、われわれは奴らを編鞭で死ぬほど打ち据え、隠匿物をみな巻き上げてやった』

10月22日

 歴史の〔情報〕資料。マーモントフがエレーツに入ったのは8月18(31)日のこと。
 白軍の仮想戦略。チェルブヌィで鉄路が押し曲げられた。プレトチェーチェンスカヤ郷への道。郷ではたえず戦闘があり、しばらくしてチェルブヌィ―ドルゴルーコヴォから別の部隊がザドーンスクへ折れ、突然ザドーンスク方面からエレーツ近郊に姿を現わした。
 オリョール市が2時間、赤軍に占拠されたものの、革命委員会(レフコーム)の活動時間はその2時間だけだった、と――これも噂にすぎない。
 朝8時、通りを兵士がひとり。ぴかぴかのボタン、背嚢に十字架を下げて、歩いていった。

 すべての権力が去った。からっぽ。プシカリーにカザーク兵。コミュニスト(100名)と水兵が攻撃のためソスナー川を越えた。街中のセンナーヤ〔干草〕広場に市の援護を受けて砲台が据えられた。建物の破壊と火災から市を守ることが期待されているのだ。
 センナーヤ広場の大砲

発火しやすい干草の山と火薬。危険の連想。

 「カザーク兵の数が少ないので、ひょっとしたら退却するかもな。そうなら、わが方〔赤)は大喜びだ、さあ出番だぞレフコーム!」

 シチェーキンが来た。この重苦しい時代にドストエーフスキイに目覚めた男。わたしとドストエーフスキイの話を、ついでにピーサレフ(あの羊頭)のことも話していった。きのう(砲声がこだまして、全権力が町を放棄しようとしていたまさにそのとき)、ピーサレフは、中学校のソヴェートに一筆――なぜプリーシヴィンとスィチンは人民教育課の承認もなしに教師に指名されたのかを問うたらしい。(そう言う自分はケロシンの買い溜めをしているのだ。それこそ官僚主義(ビュロクラーチヤ)の塵芥(ちりあくた)だろうに)
 「これは――」と、シチェーキン。「ま、行って自分の目で確かめるしかないですね。本当のところは誰にもわかりません……」

ピーサレフのことではなく、戦況と戦闘現場の話である。

 「もしかしたら」と、わたし――「ナニゴトもなく過ぎるかも。白軍は市中に砲台が据られたことを知って退却するかも。たぶん撃ってはこないだろう」
 シチェーキンが帰ったあと、12時半に戦闘が始まって、暗くなるまで続いた。元の陣地へ。水兵の姿。レット人〔ラトビア兵は革命家〕。わが家の地下室(むろ)。騎兵隊がトルゴワーヤを荒らし回っているという噂(またも隠匿)。戦闘のほうが捜索〔徴発〕よりまだマシ。
 白軍がカジーンカ(市から3露里)を占拠。赤軍がそこへ一斉射撃――市の頭越し(修道院とアグラマーチから)に。
 夜の9時、庭に出た。真っ暗だ。黒人の尻の穴より暗い。静か過ぎて、鴨の鳴き声が町中に響き渡る。
 深夜の占い。赤は夜中にレベヂャーニへ去るか、それとも留まって、あすまた戦闘再開となるか?(去ることなんてあり得るのか?)

10月23日

 ぱらぱらっと、目の小さい篩(ふるい)から降ってきたような雨。小雨。庭でシジュウカラが囀っている。仲の悪い鴉が2羽、屋根の上で喧嘩している。屋根の鉄板をバタバタいわせ、転がり、そのまま地面に墜落。2羽とも舞い上がり、また取っ組み合う。一方は明らかに弱っている。仲間がたくさん飛んでくる。一方が毟れば、一方も負けずに反撃。結局、多く毟られたほうが木の中へ。葉の下に身を隠すが、たちまちほかの鴉たちに捕まってさらに毟られてしまう……いやはや。鴉の世界でも国内戦が、旧体制の転覆が起こっているのだろうか?
 連行された医師のスミルノーフのことで中央砂糖管理部があたふた〔奔走〕しているという。

「ツェントロサーハル」は砂糖の割当(配給)の権限を有した機関(ビュロー)。

 朝の8時。スィチンが午前の偵察(じつは水汲み)の帰りに立ち寄る。橋は渡れない〔通行禁止〕ので、下の通り(スタロセーリスカヤ通り)を来た。すでに兵士たちは個人住宅に分宿していると言う。これからいったいどうなるのか?
 朝の10時にリョーヴァが空の桶を手にやって来る。水のある場所には近づけない。機関銃で鴨を撃っていて、豚が殺された、と。深夜、大きな車列が退却していったようだ。ということは、わが方はまだ市の向こうにいるということだ。彼らのもとに肉とパンが運ばれた。おそらくカザークは少数の兵でカジーンカを占拠したのだ。わが方だけの戦闘〔独り芝居〕だったのか? 地平線上にたまたま見えた鎖〔散兵線〕らしきものに向けて撃ったのかも。

 海のスチヒーヤ――女性。男たちはボートを漕いでいる。見張り役は強くて陽気な奴。ずるい男はおどけ役。弱いお人好しもいる――みな横向きに坐って大波に翻弄されている。漕いでいるのではない、波に運ばれているのだ。海上で嵐に遭っても、人生途上で女に逢っても、男どもの性格は大して変わらない。
 生者の権力志向は死者の王位の要求だ。真(まこと)の生活(ジーズニ)を生きるためには権力を断念しなければならない。
 社会主義の課題は、社会から生活(ジーズニ)を取り去ること、生活(ジーズニ)を支配して社会なき国家を創出すること。
 社会の人間の、〈住人の〉、凡俗の生活は(システム?)、子どものいのちを守る自然の秩序――現在この課題をわが身に引き受けようとしているのがコミュニズムである。どうやら追剥ぎどもは母親から赤子を盗もうとしているようだ。

 詩人が看護婦に向かって――『詩を世話するのはね、病人の世話と同じくらい大変なのだよ……』

 ツァールスコエ〔ツァールスコエ・セローのこと〕が占拠されたと医者が言う。オリョール市が赤に奪取されたなんてナンセンスだ、とも。ボブルィキノ駅の近くで戦闘あり。
 わが方が大砲を撃っている。〔こっちは〕ナニがナンだかわからない。
 ソスナー川の向こうで白が徐々に地歩を固めつつある。こっちは赤。ソスナー川の向こうの、兵舎と停車場のある地区から榴散弾が飛んでくる。わが方でも砲弾が炸裂。どうもそれはこっち〔赤〕の不着弾のようだ。

 赤の狙いは白が市を標的にしないようにすること。そのために住宅地に砲台を据えたのである。つまり全住民が人質なのだ。陣地が入れ替わったところで、赤は攻撃しないし市を破壊しないだろう、できやしない。もし彼らにその説明を求めれば、十中八九こう答えるはず――『われわれは中立なんて認めない、われわれと共にない者はわれわれの敵である。われわれと共にあってわが党に加入するなら、当然、安全地帯に疎開できる』―『でも、貧乏人や病人や年寄りはどうなる?』―『心配しなくていい。われわれはチフス患者だって疎開させた』
 〈人質〉というのは概して「農民中の最貧農」その他の言葉と同様、恐ろしく非人間的な抽象概念なのである。
 夜、夜襲の可能性について語り合う。とにかく一刻も早くこんな恐ろしい状態から脱したい。心は掻き乱されているが、彼らの視点に立てば、これは正義! のみならず階級闘争のプリンシプルを受け容れるなら、やはり彼らは正義なのだ!
 まずもって自分に必要なのは白軍だ。必要なのはまず彼らが農村に入ってなんとか穀物を手に入れること。使用を禁止されている自転車を修理し、屋根裏からは猟銃を、地下の室からは耐火金庫(原稿その他)を、それと、仕舞ったままの自分の才能を引っ張り出すこと。埋めたものをすべて掘り出す必要がある。

10月24日

 ボリシェヴィキ権力2周年記念。祝日に際してひと言――
 「この猿(コムーナ)を考え出したのはドイツ人、そこから出てきたのがロシアの百姓たち=反乱者(ブンターリ)だ」
 ヤーシャ〔継子〕の社会的平等のイデーを思い出せば、わかり易い。まず総括(一般的結論)だ、そしてそこから集団化(公共化)へ一直線。野蛮人はいかにしておのれの最初の総括(結論)を導き出すものか、その方法は――まず頭に刻み目が入って、そのあとセクトと自由が出来上がる。〈Я(わたし)〉に対する不公正、それが基礎にあり、結論のあとで〈Я〉が〈МЫ(われわれ)〉に変ずる。

 今朝、部屋に光が差すか差さないか、ちょうどそのころだったが、空の星が月と合体したのだ。不思議千万! マロースの中、日が昇る。屋根は真っ白。そのあと霧が降りたため、日中は撃ち合いもなく、安心してケロシンを買いに。何はともあれ、小さい蹄を舐めにワインの王様のとこに行けたら御の字なのだ

ワインの王様は酒屋(場)の名のようである。小さな蹄は小さなグラスか? 山羊の蹄の跡に溜まった水を飲んで白い仔山羊になってしまう有名な民話(『姉のアリョーヌシカと弟のイワーヌシカ』)がある。

 深夜、停車場に赤の攻撃があって〈敵のしゃっつらをぶん殴った〉のを知ったが、白がたった12人でカジーンカの占拠を図った様子は、〔ワインの〕王様の屋根裏からも見てとれた。
 きょう12時に白軍からの最後通牒。市を明け渡せ、さもなくば爆撃するぞ、と言ってきたらしい。
 夕方5時ごろ、周囲(ソスナー川とルチョーク〔ソスナーの小さい支流〕のあたり)で激しい戦闘。今(7時)も続いている。猟銃、機関銃、大砲。冗談みたいだが、相手は総勢12人のカザーク兵である。

 夜、ニコーリスキイ〔エレーツの教師〕が人民教育課に顔を出した。ドアを開けたら、犬が飛びかかってきた。とっさにドアを閉める。犬はいきり立ってしばらく咆え続ける。赤犬だった。
 きょう、医師と二人でワインの王様を(酔っ払って)出たら、ぜんぜん人影がない。見晴らしの利く、むやみとだだっ広いスタロオスコーリスカヤ通りに、まったく人気がないのだ。みんな地下の穴蔵か石造りの離れにでも閉じ籠っているのか。気がつかなかったが、よく見ると、鶏がいる。それも、ずっと遠くに。今や鶏たちはメインストリートの主である。さあどうだ、捕まえられるものなら捕まえてみろ! 何を思ったか、したたかに酔った医師がそのうちの1羽をステッキで打ち据えようとする。そんなつまらんことで逮捕されては堪らないので、止めに入った。
 夜の8時前に戦闘は終了。それまでは、川向こうからの発射音がこちらの庭にこだまして、それが想像以上の轟音になり、音量も2倍3倍と増幅して、誰もがパニックに陥っていたのだ。いずれにせよ、〈12人のカザーク兵〉がカジーンカで密造酒(サマゴン)を吞み過ぎて馬鹿をやらかし、わが方も〔ソスナーの〕渡し場付近で大して意味のない大砲と機関銃の〈弾幕〉を張ったことは間違いないのである。ああ、早くなんとかしてくれ!
 寝る前に、みんな一緒にフルシチョーヴォに移れないかと考えた。エレーツのフロントの地平線がすっきりするまで〔弾幕が消えるまで〕、3日ほど待ってみることにする。
 ボリシェヴィキ革命2周年記念はかくして幕を下ろした。1年前、自分はフルシチョーヴォを追われた。2年前には文学から締め出された。こうまで追われ続けて、なにが〔革命〕記念日だ!

   編訳者の参考メモ(6)

 ここで少し過去を振り返ってみる。
 前年(1918年)の春、最終的に故郷フルシチョーヴォへ。
 その夏、ソフィヤ・コノプリャーンツェワとロマン。
 秋、暴動農民たちにより土地と家屋を没収される。妻エフロシーニヤ・パーヴロヴナと下の息子ピョートル(ペーチャ)がスモレンスク県(彼女の故郷スレドヴォ村)へ避難。
 「レーニンの犯罪は、国民を――単純なロシアの民衆を甘言で釣り、誑(たぶらか)したことにある」(9月のメモから)。「責められるべきはレーニンだ。しかしこの男が悪の化身の最期の環ではないのだが……」。 アヴァドン、闇の公〔王〕、ゴリラ、殺人鬼、赤い鼻面〔赤衛兵〕、スモーリヌィ宮、酔っ払った鴉…

 1919年、コノプリャーンツェフ一家と〈コムーナ〉生活(同居)。図書館司書、考古学および地誌学の主催者として活動。
 夏、国内戦続く。陸軍中将コンスタンチン・マーモントフ(1869-1920)が白軍騎兵隊を指揮して、しばしば南部戦線で赤軍の後方部隊を襲撃。プリーシヴィンは白軍側につくことを拒絶。戯曲『悪魔の臼』(のちの著作集(1935~39)に収録)。人民教育の指導員(教師)となり、エレーツ高等中学〔かつて退学を喰らった母校〕で地理学を教え始める。

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