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プリーシヴィンの日記        太田正一

2013 . 03 . 17 up
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1919年2月2日(の続き)

 満天星斗の夜明けの最初の兆し――なんという歓びよ! 死なんとするときに、本当に自分は、こんな幸福の瞬間を忘れたり、ただ助かりたいの一心で口を噤んでいる……そんなことがあり得るだろうか?
 これは何だろう――まだ若さが残っているということか? それとも村の爺さん婆さんの、せめてあと一日生きていたいという繰言(くりごと)だろうか、それとも老いの始まり?
 大人の人生に子どもの顔立ちを表現すること。
 鼠たちはじっとしている。国家非常委員会とヨーロッパの滅亡。

正式には「反革命怠業取締非常委員会、略してチェカー。ソヴェート体制下の秘密警察(1917-22)。

2月5日

 目の前に異常な世界が広がっている。それがすべて新しいもので、決して誰にも関わりないものと自分は思っていたが、しかし今はそうは思っていない。誰でも――普通のそこらの女でも、誰でも味わわされている現実だ。

 ジナイーダ・イワーノヴナは、発疹チフスに罹ったら〔病院に〕入れてもらおうと必死である(病院は満杯状態だ、ベッドもハンモックも……)。
 薬探し。医師たちは処方箋をすぐ出すが、肝腎の薬はどこに?
 寒さ――この、快適(ウユート)の破壊者。
 マロースが気力を奪う。煙霧。息もできない。気管支炎? 体調悪化。棺(ひつぎ)が運ばれていく。坊主がひとり、何やらもぐもぐ。使い古しの棺らしい(棺に2種類――伝染病患者用と通常の病死者用と)。
 棺を迎える兵士。手には大きなフィーリン〔ワシミミズク〕の剥製。

 女子中学が男子中学へ移転中――ギムナージヤの男女共学である。地図を手で運ぶ者、小さな橇で物理実験室の備品を運ぶ者。

 わがチーホン・ザドーンスキイの聖骸が駄目になった話をしている。委員会が聖骸を収めた棺を開けて厚紙箱と包帯を剥がしたところ、骨が細かく砕けて粉みたいになったと言う。骨粉を茣蓙(ござ)にのせて修道院の中庭に運び出す。こんな高札がかかった――『見よ、これが諸君が崇(あが)めていたものの正体である!』。

ボローネジ、エレーツ、ザドーンスクの主教であった奇蹟者チーホンのこと。ちなみにボローネジ県のザドーンスク市にあった男子修道院の創立は1627年。分骨された聖チーホンの遺骸には昔から数多く巡礼者が詣でた。

 人びとは噂し合った――チーホン・ザドーンスキイ様はお隠れになったのだ、あの骨粉は不信心な者たちに見せつけてやったのだ、と。
 それもこれもわしらが崇めていたもの……
 ロシアの使命(ミッション)は世界に向かって茣蓙の骨粉を見せつけてやること。ヨーロッパかどこだったか、そこには生活建設の無敵を誇る一大勢力が存在するのだそうだが、なに、そんなものは、この茣蓙の骨粉を見せてやるだけで〔ぐらっとなって〕しまう。それじゃ〔そのヨーロッパの一大勢力は一発で〕お仕舞いってわけだな……(そう言ったのは非常委員会のブゥートレロフである)。
 ひとりの老婆がわれわれのチーホン・ザドーンスキイの話に聞き耳を立てていた……

2月6日

 イワン・ミハーイロヴィチが訊いてくる――
 「何かニュースはあるかい?」 
 わたしはチーホン・ザドーンスキイの聖骸のことを話してやった。頭蓋骨、骨のこと。骨に手を触れたら埃が舞ったこと、教会の近くに置かれて、聖骸について非常委員会が面白くない高札を立てたこと……
 病院の付添婦〔前述の老婆と同一人物?〕が言った――
 「あの方はお隠れになったのだよ」
 イワン・ミハーイロヴィチが言う――
 「おれが知りてえのは……どんなニュースかと思えば、まあ……」
 「何が知りたいんだね?」
 「もっと精神的なやつ」
 「と言うと?」
 「そんなのはうわっつらな話だよ」
 「チーホン・ザドーンスキイの聖骸が?」
 「そりゃそうだよ」
 「じゃあ、うわっつらでない、きみの言う精神的なものとはどういうものだろう?」
 「そうだね、いのちみたいなね、うん、ころころ変わるもの、それか新しい理想(サヴェルシェーンストヴォ)か、新しい国(クライ)のことかな。わしらはもうぎりぎりの瀬戸際(クライ)〔棺桶の近くにいる、死にかかっているの意〕にいるってのに、あんたは聖人の骨なんか持ち出すんだものな」
 「われわれが崖っぷちにいる――それは確かだ。発疹チフスが猛威を振るってる。きのうまで同じ卓を囲んでいたのに、きょうはいないんだ」
 「まったくなぁ!」
 「棺だって使い古しだ。板がもう手に入らない……」
 「そうそう!」
 「解体された家はみな焚付けに回されている」
 「ああもう、どうなるんだか?」
 付添婦がまた言った――
 「あの方はお隠れになったんだよ。骨が粉々になったから、悪党なんかにゃ何のことだかわからんのさ」
 「どこに隠れたって?」
 「どこに隠れたかだって? ほら、そこにおられますよ、あの方は。ただ、目には見えないだけさ。これはね、あんた、わしらの罪のために神様がお下しなすった災なんだよ」

 イワン・ミハーイロヴィチは言う――そんな下らん話は持ち出すな、見てみろ、恐怖と脅威に満ちたこの暮らし。聖骸なんて問題外だ。

 「ところであんたは、文学や芸術への関心がまったくなくなったって話をなすってたようだが、そりゃ当たり前でしょう! 近親者の死だって、あっと言う間に遠い過去のことになってしまうんだ。あしたどうなるか? いや、きょうをどう生きるかが問題なんで、聖骸なんて、くそ、そんなもの、どうなったっていいんだよ!」

2月7日

 アンドレイ〔アンドリイ〕が美人のポーランド娘のために祖国を裏切った

ゴーゴリの小説『タラス・ブーリバ』(1835)の登場人物。小ロシアのカザークの隊長、タラス・ブーリバの息子のアンドリイが、学窓で知り合ったポーランド娘への恋情から味方を裏切る。怒ったタラスが戦場で息子を殺す。

2月10日

 16日にリャビンキへ。17日はペトローフスコエ。18日から3月1日にエレーツ市へ。

2月11日

 事務局(セクレタールカ)へ。地区委員会(ライコーム)の事務所に寝泊り。吹雪。

セクレタリアート(コムーナの事務局)のことか? 日記の記述は具体的でない。プリーシヴィンは、セクレタールカに集められたさまざまな蔵書(個人の)や文書の分別・整理の仕事を委託されたようだ。

 「用を足しに外に出たんだが、しゃがんだら、ちんぽこが凍っちまった……あの婆さん〔付添婦?〕、なんて言うかな、信じるかな?」
 〔以下も〕洗面所での朝の会話――
 「フメリーニェツに行こうとしたら、言われちゃったね。じっとしてろ!って」
 「勝手なことはできねえよ。ところで、どうだい、あんた、どう思う? 神様はいなさるかね?」
 「そんなものいねえさ!」
 「じゃあ、こんな吹雪、誰が起こしてる?」
 「そうなる原因があるんだ。言ってみりゃ、それは……」
 「イイスス・フリストース〔イエス・キリスト〕かな?」
 「キリストだって神だって似たようなもんだが、原因じゃねえな」
 「あんた、名はなんてんだい? イワン? そうか、嘘言っちゃ駄目だよ。おれは吹雪が何で起こるのかって訊いとるんだ」
 「運命(スヂバー)がそうさせるんだ、そう言われてる」
 「つまらんなぁ! そりゃ、わしらの馬鹿な考えだ。スヂバーだって? じゃあな、100人の人間が助けに行ったら、おまえさんの事業はその100人とひとつにつながる――もうそうなったら、それはスヂバーなんだよ。しかしこんな吹雪ん中に勝手におれが独りで飛び出してみろ。ただの身の破滅だ。誰も助けることなんてできねえから、こう言われるのがオチさ――『まったく馬鹿な奴だ、なんだってまたこんな吹雪に!』ってな」

 町外れの家並の先に少しばかり高くなったところがあって、そこに恐ろしいスキタイ人〔野蛮人、ボリシェヴィキ〕の陰がちらついている。じっさい堪らない……外に出る。もうもうたる雪煙。美しいもの、貴いもの、心優しいもの、何もない。ひとつ残らず吹雪の果てに消えてしまった……
 まったく、何しにこんなスキタイ人の地にやって来たのだろうね、愛しい人〔ソーニャ〕よ。引き返せるものなら、そうしたい。ああ、きみをこよなく愛しく思う……」

 地区委員会事務所。小箪笥の上にロココ調の時計――丸々した可愛い天使たちの飾りがついている。「貧農通報」紙の山。その脇の薄青いソファー(背もたれが海鼠(なまこ)板)に、毛皮の長外套(トゥループ)をひっかぶった党細胞の議長が横になっている。なんとも汚いクッションである。タイル張りの簡易ベッドでは、満人帽の髭面がでっかい鼾をかいている。脚を鰐みたいにひろげて、ときどき股間を搔いたりする。

1918-19年にエレーツ市で出ていた新聞(ロシア共産党の郡の委員会発行)。

 執行委員会の書記が持ってきた大きな砂糖のかけらと、しばらく格闘する。ようやくぶっかいたやつをさらに叩いたり潰したりして、まず自分で齧り、残りをわたしに突き出し――
 「ほれ、これがあんたの分!」
 ここではまだチフス患者は出てないかと訊くと――
 「多いな! とても看て回れんよ。うちの家族もみんな熱出して寝込んでんる」
 具合のいい立派な家具はどれも、フヴォストーフ、ベフチェーエフ、ロパーチン、チェーリシチェフ、ポポーフカたちの領地から運ばれてきた〔せしめてきた〕ものばかり。窓辺に水銀気圧計……
 少年が小さな歯車のことやこれこれの本はありますかと訊いてくる。わたしに気がついて、こちらにも同じ質問をする。
 「ああ、それは高等数学だが、大丈夫かな?」
 「大丈夫です、たぶん、わかります……」
 機械関係の本の中からぽろりと葉書が一枚――『キリストは甦り給えり(フリストース・ヴァスクレッセ)、大好きなママへ!』と、ある。

 幾つもの本棚。図書館の司書はすでに逃亡。自在合鍵を捜しにかかる。だいぶ手間取った。〔司書は〕鍵を持ったまま逃げたのだ。法的な手続きを踏んでの退職で、〔退職願は〕正式に受理されたとのこと。管理責任者がいなくなったので、さんざん頭を悩ました。結果、ここ〔図書館〕に執行委員会を移すことに決定したのだ。
 〔図書の〕分類作業中だった。こんなことを言われた。
 「どうかここの村を馬鹿にしないでくださいね。すべて町のためですから!」
 こんな人たちもいた。
 「持ってってください。全部持ってっていいです。本を救ってください……このままじゃどうせ駄目になってしまいますから!」

 愛――それは自分の家(ドーム)。わたしは家にいる。よそ見などしていられない。わたしはすべてを手に入れた。これ以上何も要らない。わたしの家(ドーム)はみんなのような丸太造りではない。わたしの家は大気のような、クリスタルの、青味がかった、早朝の薄明かり、靄のようなものに包まれて……わたしの親しい友は隣に住んでいる。これまでずっとわたしの青い家についてきた友、その友はわたしの隣に住んでいる。だから、自分はこれ以上何も言うことがない……

自然のドームはプリーシヴィンの持論。1919年のロマンチックで非現実的な〈クリスタルの〉家は、この年いっぱいソフィヤ〔ソーニャ〕・コノプリャーンツェワとの関係を物語るが、しだいに弱くなっていく。青については日記の(十八)を。

 朝。スキタイ人たちがフライパンで脂身(サーロ)を焼いている。それを簡易ベッドの上にじかに置き、黒パンをむしゃむしゃ……
 「ミハイル〔プリーシヴィンのこと〕、あんたも喰えよ、何を見てる! ただし神殿を汚しちゃいけねえよ! ま、やってくれ。ここにあるのはみなナロードのもんだし、わしらはどうとも思っちゃいねえ。さあ、喰え、喰え!」

2月13日

 地区委員会事務所に2昼夜。蓄音機。壁の向こうにポターニン〔エレーツ郡のチェカー〔秘密警察員〕。
 簡易ベッドに傷痍軍人。若い連中がレコードをかけて踊っている。こちらはそれを待っていた! 庶民の完全な別世界。火を噴く山の麓だ、こんなところではとても地主たちは生きていけない!

 ヤーコフ・ペトローヴィチは人民教育課の管理者だ。 
 グリゴーリイ・イワーノヴィチは藪睨みの男。ブローニング〔拳銃〕を持っている。

 チェカーの面めん。
 わたしはトラ(死は獣の姿をして出てきた)について書かれた本を読んでいた。と、そこへ男が入ってきた。死人のようなその目(ポターニン)。

 レズギンカ〔カフカース地方の踊り〕。
 「ポターニンが凍死しかかっている」
 「なんだって?」
 「呻いてんだ!」

 納屋(アムバール)の中を覗く。ポートレート、十字架、子どもたちの絵。
 「で、今はどこに?」
 「死んだよ〔アムバールに押し込められていた子どもたちではなく、ポターニンのことを訊かれたと思っている〕、ああ、ここの話か? 〔みんな〕逃げちまったよ」

 執行委員会のマシーンたち。泥棒も強盗も。すべてが計画的に遂行されている。番人は泥棒であり、少年難民は郡下のこそ泥常習者である。
 イタリアふうの窓。簡易ベッド、二つの戸棚。一つには毛皮の長外套(トゥループ)、もう一つには無名画家の絵が逆さのままに置かれている。民衆(ナロード)の粗暴さに比べりゃ、チェカーの残酷さなんて大した問題じゃねえ、何だって正当化されるさなどと〔言う〕……
 「わしらを怒らせねえでくれ!」と言うから、手にしていた本を差し出す――「ほら、これはニコライの即位の本、あんたら向きの本だよ」

2月15日

 恐ろしく単調な日々……人びとが延々と送る灰色の、いつまでも卵を抱き続ける灰色の家禽にも似た日常。しかし今、その中から、黒くて恐ろしい、空を飛ぶ鳥たちが飛び出してきた。
 愛しい人よ、ほら見て。あれが、スキタイのブリヤン草の中から僕らの町に飛んできた黒い鳥たちだ。高空を吹雪とともに舞っている。
 聞こえるかい? 壁の向こうで、気が変になった女地主が何か囁いている――
 『風よ、風よ、なぜ吹くの? 誰が吹かすの? 神様かそれとも悪魔? 悪魔が風を? それとも神様か? おまえが神様だって? なんて神様だろう!』
 鉄の嘴(くちばし)を持つ黒い鳥たちがわれわれを突(つつ)き殺すだろう。難を避けようとわれわれは互いに体を寄せ合っている。そして丘の上の不吉な大村(チョールナヤ・スロボダー)から目を離さない。ここから家並が切れて、白い野原が始まっている。そこはいつも煙って、白い煙霧が渦を巻いている。このスキタイ人の国で、われわれは今、家々を護りながら、わがローヂナの魔法のおとぎ話を読んでいるのだ……

これも当然、野蛮なソヴェート・スキタイの郡本部。

 わたしは囁く――
 愛する人よ、僕らは別れたほうがいい、僕がきみを思うように僕を思ってくれ。白い地吹雪(ブラーン)にきみは僕を見、僕の声を聞くことだろう。ブラーンの中から、僕は人間の声で、恐ろしいスキタイ人たちについて話して聞かせよう。わかるだろうか、それは、暖かい青い海に住んでいた古代人たちをさえあんなに震え上がらせた野蛮な種族なのだよ。ああまた、飛んでいく黒い鳥の群れ。鉄の嘴。もう見間違うことはないね。あれは人間の心臓を啄ばむ古代の鷲だ。じゃあ、さようなら。僕は行くよ。僕のまわりで白いブラーンが渦を巻いている。振り返っても、もうきみの姿は見えない。町も隠れてしまった。でもきみは今、まだはっきりと僕の姿をとらえている。そして僕の名を呼びながら、おいでおいいでをしているね。でも、僕は行く、行ってしまう。
 わが祖国(ローヂナ)のなんと奇妙な自然。わたしを包んで、海風のように、白い、ざらざらした、冷たい雪埃が飛んでいく。飛んでいくのはしかし、その白い埃に紛れた馬の半身だけである。
 でも、空は明るい。日が昇る。灰色の動く平野に昇ってくる。それは端正な黄金の十字架だ。両側に2本の柱、七色の虹の柱が立っている。太陽の十字架はスキタイの上空に輝き、両側には虹の柱が、それこそが天の花だ!
 それは何? 約束された地の春爛漫? 花咲く十字架というようなものか?
 マロースの氷のつぶてがまともに顔を打つ。羊の皮をまとったスキタイ人が無限の果てを見つめている。その碧い目を通して、自分も、空の十字架を、天の花を見る。
 は手袋で土地を指し示しながら、スキタイ人が言う――
 「見ろ、狼の群れだ!」
 あれが狼か? 確かに吹雪の中に銀色の背中が見え隠れしている。耳を振ったり伏せたり……
 「狼だ、狼だ!」
 黒い不吉な鳥が翼を広げる、かと思えば閉じて、地吹雪(ブラーン)のなかに隠れてしまう……
 僕はきみのことを思い出したよ。僕を見捨てないでくれ!
 猛烈な風、骨まで凍らすマロースがわたしの馬をブラーンに隠したが、空は明るいのである。十字架も永遠の炎を上げる。その傍らに花が輝いている――スキタイの、わがローヂナの十字架と花が。

 「われわれは道に迷わなかったようだ。いや、われわれは正しい道を進んできたのだ」
 スキタイ人は言う――
 「ほれ見ろ、わしらはちゃんと着いたじゃないか!」
 ああ、愛しい人よ、きみの家は白い雪埃の流れに半ば沈んでしまった。きみの魔法の宮殿は、白い円柱はそのまま立っていて、トネリコの葉がすっぽりと屋根を覆っている。
 スキタイ人がわたしに言う――
 「郷(ヴォーロスチ)!」〔ここはわしらの領地だ、の意か?〕
 わたしは微笑んだ。きみの宮殿は今ではヴォーロスチと呼ばれているんだよ。周囲は何も変わっていない。以前のままだ。右手に召使部屋、鶏舎、番頭が住んでた小さな住まい。左手に大きな厩舎と納屋。
 スキタイ人に訊いた――番頭の家には今、誰が住んでいるのか、と。あそこは執行委員会の本部だ――そうスキタイ人が答えた。
 「じゃ、召使部屋には?」
 「地区委員会」
 「じゃ、母屋には誰が?」
 「あそこには非常委員会(チェカー)と執行委員会の事務所、地区委員会の各事務所と文化啓蒙サークルが入っている」

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