フスによる宗教改革の後いったんは民族文化の大輪の花を咲かせたものの独立を失い、ハプスブルク家の専制とイエズス会による再カトリック化の中で言語と民族文化が衰退していったチェコ史の暗黒時代。史実を基に周到に創作された、第一人者による本格的な長編歴史小説。
アロイス・イラーセク(Alois Jirásek)
1851年にチェコ東北部のフロノフに生まれ、プラハ・カレル大学で歴史を学ぶ。卒業後リトミシュルとプラハのギムナジウムで教師を務めながら多くの歴史小説を執筆し、チェコ民族の栄光と受難の歴史を描いて、この分野の第一人者となり、何度もノーベル文学賞の候補にもなった。後年病(聴覚と腎臓)が悪化して、1919年に未完のまま『フス派王』を出した後、筆を絶って1930年にプラハで没したが、チェコスロヴァキア建国とその後の発展に立ち会った。
浦井 康男(うらい・やすお)
1947年に静岡県熱海市に生まれる。京都大学理学部に入学後、文学部言語学科に転部。1976年に同博士課程を単位取得退学。1977年に福井大学教育学部、1997年に北海道大学文学研究科に移籍。2011年3月に北海道大学を停年退職。アロイス・イラーセク著、浦井康男訳註『チェコの伝説と歴史』(北海道大学出版会、2011年)で第48回日本翻訳文化賞受賞。