マルクス『資本論』ドイツ語初版


倉田稔著
180×115/36頁/定価(本体300円+税)

小樽商科大学図書館には、世界でも珍しいリーナ・シェーラー宛マルクス自署献呈本がある。この本が、シェーラーに献呈された経緯と背景、また日本の図書館に入って来ることになった数奇な経緯をエピソードとともに辿る。同時に、不朽の名著に関する簡便な説明を付す。(1997.4)


抜粋

 本冊子の表紙に写真で示したものは、小樽商科大学図書館所蔵のカール・マルクス『資本論』ドイツ語初版で、それもLina Schoeler宛自署献呈本である。リーナ・シェーラーは、正しくはCaroline Schoelerといい、マルクス家の友人で、家庭教師をして生活していた。ただし、よく言われるようにマルクス家の家庭教師ではない。本書の裏扉には、次のように書かれている。

 この小樽商大所蔵本は珍しいものであることが分かった。これが出版当時の形態であるからである。すなわちこれは仮綴じ本である。紙表紙だけの、製本されていない書物である。ペーパー・バックであり、ハード・カヴァーではない。現在残されている初版の多くは、製本されたものである。『資本論』は、まず仮綴じ本という体裁で発行された。そして当時のヨーロッパでは普通であるように、多くの読者は本を入手してから、それを自分で製本するか、製本屋に出して製本してもらったのである。

 また『資本論』は、当時ヨーロッパでよくあるように、ページが閉じられている。つまりペーパー・ナイフで各ページを切らねばならない。そういう形で発行されたのであった。小樽商大所蔵本は、その点では残念ながら、ページは切られている。所持者大野教授(後述)が読んだのであろう。ただし同教授が買った時には、ページは切られていなかった。


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